2019年のHBO作品、「チェルノブイリ」を観終わりました。
 
 旧ソ連時代に起きたチェルノブイリ原発事故をテーマにしたドラマです。

 全五話とHBO作品にしては短めのドラマですが密度が濃く、抑えた演出や描写がかえって原発事故の深刻さを浮き彫りにしています。

 物語のクライマックスは、原発の技師たちを裁く裁判で、物理学者のレガソフが爆発事故の真の原因を告発する第5話です。

 ソ連のような統制、権威主義国家で科学者としての良心や真実を貫き、事故の真の原因がソ連という国家のあり方そのものにあることを明らかにすることは、非常に勇気のいることでした。

 この物語のもう一人の主役は、チェルノブイリの事故処理にあたったソ連政府の幹部であるボリスでした。

 「大した事故ではない」としてボリスに処理を押し付ける政府と現場の深刻な状態に挟まれたボリスは、次第にレガソフと通じ合うようになっていきます。

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 そして、爆発による火災を消火し大量の放射線を浴び苦しみ抜いて亡くなった消防士や、事故処理のために危険を承知で土木作業に従事した炭鉱労働者、散らばった危険な黒鉛を命懸けで回収した兵士たち、といった名もない人たちも描かれています。

 絶対観て損はない素晴らしい作品でした。
 「フクシマ」の経験を有する私たちにとって、チェルノブイリは決して対岸の火事ではありえません。

 
 東海村の臨界事故で亡くなった作業員の死にゆく様を克明に描いた「朽ちていった命」は放射線の恐ろしさをまざまざと教えてくれます。この本に記録されている作業員の方のぼろぼろに朽ちて行く肉体と、「チェルノブイリ」の消防士の亡くなり方は一緒です。