堀辰雄は、長野県にゆかりの深い作家です。

 


 「大和路・信濃路」は小説ではなく、文字通り堀辰雄が愛した大和や信濃にまつわる小品を収録した作品で、晩年の木曽地方や姨捨への旅、などが描かれています。

 私は今回初めてこの作品を読んでみましたが、エッセイや随筆とも違う彷徨うような堀辰雄の端正で、どこかノスタルジックな文章を味わうことのできる佳作だと思います。

 堀辰雄は、許嫁の矢野綾子さんを結核で亡くしています。

 矢野綾子さんが療養し亡くなった富士見高原のサナトリウムでの日々を題材にした「風立ちぬ」は堀辰雄の代表作ですが、静かな高原で死を前にした恋人との残り少ない時間を抑えた筆致で描き、強く印象に残ります。
 
 


 堀辰雄は、フランスの作家に影響を受けたある意味「ひ弱」な作家であるとの印象が付き纏いがちですが、自己をどこかで冷たく突き放した視点を常に有していた足腰のしっかりした作家であると思います。
 
 「美しい村」は矢野綾子さんとの出会いを含めた軽井沢(信濃追分)での生活を題材にした美しい作品で、軽井沢の静かで落ち着いた当時の雰囲気を愉しむことができます。
 
  軽井沢に出かける際には、アウトレットも良いですが、文庫本を片手に、堀辰雄ゆかりの文学館や教会を巡ってみるのも楽しいと思います(先日立ち寄った堀辰雄文学館と聖パウロ教会をご紹介)。

 FullSizeRender

 堀辰雄文学館(信濃追分)↑

 すぐ近くに、「追分コロニー」という素敵な古本屋さんもあります。
 本好き、読書好きは絶対におすすめです。

FullSizeRender

 聖パウロ教会(旧軽井沢)
 
 100年ほど前に作られた木造の教会で、静謐な空気に満ちた空間です。

 
 映画「風立ちぬ」は、飛行機のエンジニア堀越二郎が主人公の物語ですが、ビジュアルも含め人物造形はむしろ堀辰雄のそれが大きく投影されているように思います。