2021年9月7日,時事通信の記事です。

弁護団「控訴審で誤り正す」 秋元被告、判決「頭にきた」 IR汚職

懲役4年の実刑判決を言い渡された衆院議員秋元司被告(49)の弁護団は7日、東京都内で記者会見し、検察側の主張を全面的に認めた東京地裁判決を批判。  「控訴審で誤りを正す」と述べた。  会見した弘中惇一郎弁護士によると、秋元被告は判決前、6割方無罪になるだろうと考えていた。判決後は「考えた中で最悪のシナリオだった」と納得できない様子で、「むかつく」「頭にきた」と弁護団に強い口調で語った。  議員辞職する考えはなく、次期衆院選に現在の東京15区から出馬する意向も改めて示したという。  弘中弁護士は、最大の争点だった議員会館での現金300万円受領が認定されたことについて、「贈賄側のあやふやな供述などから授受を認めたことは、証拠の評価としてひどい」と強調。面会がなかったことを示す客観証拠の一つとして提出した秋元被告のスマートフォンのアプリ記録の証拠能力についても、「(地裁は)さしたる理由も示さず退けた」と批判した。 

同日夕方の朝日新聞の記事
です。

秋元司議員の保釈、東京地裁が許可 保証金1億円は納付済み

 カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐり、収賄と組織犯罪処罰法違反(証人買収)の罪で懲役4年などの実刑判決を受けた衆院議員・秋元司被告(49)について、東京地裁は7日午後、保釈を認める決定を出した。1億円の保釈保証金は納付されたという。

 東京地検は決定を不服として抗告したが、高裁が抗告を棄却すれば秋元被告は保釈される。

 東京地裁は7日午前、秋元被告に懲役4年、追徴金約760万円(求刑懲役5年、追徴金約760万円)の実刑判決を言い渡した。秋元議員は判決前に保釈されていたが、実刑判決を受けたことでその効力はなくなった。弁護側が判決後に改めて保釈を地裁に請求していた。

 保釈保証金1億円のうち、今年6月の保釈時に納めた保証金8千万円を使い回せるため、秋元議員は今回新たに2千万円を納付したという。

 秋元議員は2019年12月に収賄容疑で逮捕され、20年2月に3千万円の保証金で保釈されたが、贈賄側に報酬を示して裁判でうその証言をさせようとしたとして、20年8月に再び逮捕。保証金3千万円が没取されたが、今年6月に新たに保証金8千万円を納付して保釈されていた。(三浦淳)



引用終わり。

 有罪判決の当否については,控訴とのことであり,コメントはしませんが,
今回は「保釈」についてです。

 保釈は,起訴されて身柄拘束されている被告人について裁判所が一定の条件のもとで身柄拘束を解除することをいいます。  
 一定の条件とは,具体的には,保釈保証金の納付(逃亡したりその他の条件に違反すると没収されることになる)と事案に応じたその余の条件です。

 今回の秋元氏の事件では,一審判決前に保釈請求が許可されていました(保釈保証金は8000万円)。
 しかし,今回,実刑判決(執行猶予がつかない,「刑務所に実際に行きなさい」という判決)を受けましたので,その時点で保釈は効力を失い,直ちに収監されます。
 このような場合,判決言渡時に待機している検察庁の職員がそのまま被告人を連れていってしまいます。
 
 被告人が控訴手続をとる場合で身柄拘束の解除を求めるためには,控訴とあわせてあるいは控訴後に,再度,一審の裁判所に保釈請求を行う必要があります。今回の秋元氏の事件でも,そのようにして,一審裁判所が保釈を許可したということです。検察官は,基本的に保釈には消極的な意見を出してきますし,一審の有罪判決後はなおさら強硬に反対します。今回も検察は,保釈を認めるべきでないとして東京高裁に準抗告した(棄却)ようです。

 この場合,控訴で確定していないとはいっても裁判所が有罪判決を出しているわけですので,保釈保証金は,積み増しを求められるのが通常です(理屈的には,「実刑判決により逃亡の恐れが高まった」と評価するのでしょう)。秋元氏の事件では,2000万円プラスとなったようです。

 したがって,一審判決で実刑判決が予想される場合には,保釈請求の準備(特に積み増しの保釈保証金の用意)を検討する必要があります。
①控訴する場合だけでなく,②控訴はしないけれども,一審判決後,判決確定前に身辺整理をしたいとか,病院を受診する必要がある場合なども再度の保釈請求を検討する余地はあります。