銀行(金融機関)は、わたしたちの身近な存在でありながら、預金者から集めた巨額の資金を運用し、経済全体に大きな影響を与えています。
 弁護士としても、債務整理や倒産処理事件の中で、銀行とやり取りをするときはありますが、そういったミクロなレベルから離れて、「銀行」という組織を大きな歴史の流れでみると大変おもしろい業種であることがわかります。

 それは銀行は、単に収益を上げて儲ければ良いという組織ではなく、強い公益性が要求されるということです。当たり前といえば当たり前ですが、銀行が免許制であることはそういった強い公益性に由来するもので、そして歴史上、しばしば銀行はその道を踏み外してきてしまったことがあり、それはひいては私達の生活に大きな影響を与えることになります。

 銀行の歴史という場合、中世のイタリアまで遡ることもできますが、現在との関係では、やはり戦後〜高度成長期(1955〜1970年)、オイルショック(1973〜)、プラザ合意からのバブル景気(1985〜89)、その崩壊と不良債権問題、金融危機(1990〜)、現在、という私達の「いま」に直結する流れが重要です。

 例えば、今の若い人には「みずほ銀行」や「三菱東京UFJ銀行」といったメガバンクの存在は当たり前のものですが、もともと別であったいくつかの都市銀行が合併を繰り返しそこに至ったことはもはや知らない人のほうが多いのかもしれません。
 例えば、みずほ銀行は、富士銀行、日本興業銀行、第一勧業銀行という3つの大銀行が合併してできたメガバンクですが、そこに至る経過には怒涛のような流れがあるわけです。

 そして、何よりも「バブルとはなんであったのか」ということは現在の日本社会を理解する上で、避けて通れないトピックです。土地が投機の対象となり、「東京23区の土地の値段が、アメリカ全土の土地の値段を上回る」という途方も無いことが現実に起きたのがバブルです。バブルを生み出した主要なプレーヤーは、「土地は値下がりしない」という神話に基づき、途方も無いマネーを融資した日本の銀行でした。

 「バブル−日本迷走の原点−」(永野健二)は、そんなバブルの発生と崩壊、バブルに踊った日本人や銀行、証券会社、大蔵省を様々な角度から描く好著で、バブルのことを知りたいと思ったらまず読むべき本です。

  


「ドキュメント 銀行 金融再編の20年史」(前田裕之)は、バブルの後遺症である不良債権問題で重傷を負った邦銀の再編を丹念に描く著作です。
 中でも、長期信用銀行という3つの特殊な銀行、日本興業銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の没落と再編は大変読み応えがあります。


ドキュメント 銀行 金融再編の20年史─1995-2015
前田 裕之
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2015-12-26



 「実録・銀行 トップバンカーが見た興亡の60年史」(前田裕之)は、名門都市銀行であった富士銀行の頭取を務めたバンカー橋本徹氏を主役に据えたドキュメンタリーで、橋本氏が手掛けてきた国際業務の観点から、日本の銀行のあり方を振り返るという趣旨の作品で、まさに銀行激動の時代を生き抜いた歴史の証人としてのリアルな視点を追体験することができます。

 
実録・銀行 トップバンカーが見た 興亡の60年史
前田裕之
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2018-02-25




 「銀行」という観点から日本社会を見てみることも面白いのではないでしょうか。