株式会社を設立する際に必ず必要となるのが「発起人」です。

 簡単にいうと「会社を立ち上げる中心的な役割を担う人」ですが,法的には「定款に署名または記名押印した者」とされており,会社の根本規則である「定款」を作成した人が発起人であるということになります。
 発起人は,会社設立時に1株以上の株式を引き受ける必要がありますので,最初の株主でもあります。

1 発起人は1人である必要はなく,複数名でもかまいません。


2 発起人の資格制限
  
(1)外国人
   外国人であっても制限されません。但し,本人確認資料として日本人とは異なるものが要求されることがあります。印鑑登録証明のある外国人の場合,それで足ります。

(2)未成年者
   普通はあまりないと思いますが,未成年者も発起人となることはできます。
   但し,親権者(父母など)の同意が必要です。
   また,印鑑登録証明は15歳未満の人には許されていませんので(各自治体の条例でそうなっています),原則的には15歳未満の未成年者は発起人になることは難しいです。
   なお,未成年者とは,20歳未満の人を言いますが,法律改正により,2022年4月1日以降は,18歳未満の人が未成年者となります。

(3)成年被後見人,被保佐人
   成年後見人の代理や保佐人の同意で発起人となることができますが,慎重に考慮する必要があります。 

(4)法人
   設立しようとする会社の目的が,法人の目的の範囲内であれば,法人も発起人となることができます。

(5)法人格のない組合,法人格のない社団
   発起人となることができません。
   組合の構成員個人が(事実上組合の代表的立場で)発起人となることはできますが,後日トラブルが起きる原因にもなりかねませんので,慎重に考慮する必要があります。


  
3 発起人の責任
  発起人は,適法かつ適正に会社を設立する任務を負う者であるため,以下のような責任を負っています。

(1)損害賠償責任
   発起人が株式会社の設立についてその任務を怠ったときは,会社に対し,これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法53条1項)。


(2)第三者への損害賠償責任
   第三者に対しても,任務を怠ったことについて発起人に悪意または重過失があったときは第三者に対して連帯して賠償責任を負います(同条2項)。


(3)財産価額の填補責任
   
会社設立について現物出資や財産引受があったにもかかわらずそれらの目的となった財産の現実価格が、定款で定めた価額に著しく不足する場合、発起人らが連帯してその不足分を支払わなければなりません(会社法52条1項)。


(4)会社成立に至らなかった場合の責任

   発起人が行った会社設立に関するすべての行為は,発起人が連帯して責任を負うことになります。

   設立に要した費用は発起人がすべて負担しなければなりませんし,株式の引受人から払込み(出資)を受けていた場合はその出資金を全額返還しなければなりません。

 
4 発起人組合契約
  発起人が複数いる場合,発起人が上記のような責任を負う者であることに鑑みて,発起人の間で契約を結んでおくこともあります(発起人組合契約)。


5 発起人は信頼できる人を
   発起人は単に定款を作成するにとどまらず,事実上会社設立の中心的な役割を果たす重要な立場の人であり,法的な責任も負うため,信頼関係が十分な人でなければいけません。
 誰が発起人になるかはよく考えてきめましょう。